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ICP : AIが構築する場所──自己記述型インターネットの新時代へ

SHOGAKU
1日前
AIが構築する新時代へようこそAIとチャットしながらウェブアプリを構築する時代誰もが自分のサービスを作れる従来のITスタックではなぜ難しいのか複雑さの壁サイバーセキュリティの不安定さアップグレードとデータ移行の困難インターネットコンピュータプロトコル(ICP)が変える未来パーミッションレスなワールドコンピュータAIがソロで構築するための「秘密のソース」ロスセーフデータ移行直交永続性によるシンプル化飛躍的な生産性向上と未来の可能性コスト1%、速度100倍も夢ではないエンジニアやデザイナーの未来は?終わりに

「AIが構築する場所──自己記述型インターネットの新時代へ」

この記事は、Dominic Williams氏による以下の動画をまとめたものです。

この動画で、Dfinity Foundation創設者兼チーフサイエンティストのDominic Williams氏は、Internet Computer (ICP) の将来性について語っています。


AIが構築する新時代へようこそ

こんにちは、そして2025年へようこそ。今、私たちはまさに“分散型インターネットエコシステム”と“AI”が現実のものになりつつある歴史的瞬間を迎えています。昨年、インターネットコンピュータがスマートコントラクトの形態で、巨大な言語モデル(LLM)などをホスティングし始めたことは、記憶に新しいでしょう。2025年には、これらのAIモデルの性能やパラメータ数がさらに大幅に拡大すると期待されています。

しかし、今回お話ししたいのは「自己記述型インターネット」というまったく新しいパラダイムについてです。これは自然言語によってネットワークインテリジェンスとやり取りし、誰もが自分だけの主権領域をインターネット上に築ける仕組みを指します。非常に大きな可能性を秘めており、10年後には多くのものが「別物」に変わっているかもしれません。

この記事のタイトルは「AIが構築する場所」。明日は遠い未来ではありません。私たちはAIと対話しながら、必要なウェブアプリケーションやインターネットサービスを構築する世界へ向かっています。ここでは、そんな新時代の姿や、それを可能にする技術的背景についてご紹介します。


AIとチャットしながらウェブアプリを構築する時代

誰もが自分のサービスを作れる

自己記述型インターネットの時代、個人でも企業でも、AIに話しかけるだけでウェブアプリケーションやインターネットサービスを作れるようになります。

  • 個人のパーソナルブランディングサイト
    ブログ投稿や写真共有、ファイル共有ができるプライベートサイトを手軽に作りたい人にとって、AIがすべてをサポートしてくれます。
  • スモールビジネスや起業家向けサービス
    Web3の仕組みを活用したeコマースサイトやシェアリングエコノミーサービスも、AIに要望を伝えるだけで準備が完了。
  • 企業や政府機関のシステム
    企業ポータルやCRM、ERPなどの社内システムもチャットベースでどんどん進化させられます。従来のSaaSに高額な利用料を払う必要も、カスタマイズに頭を悩ませる必要もありません。

こうした新しいパラダイムは、「まずAIとチャット」→「AIがURLを返す」→「ブラウザでそのURLにアクセスすると新しいアプリが動く」という直感的なフローで進行します。そして、必要に応じてAIとのやり取りで機能を追加したり、デザインを変えたりして、すぐに反映。これが「自己記述型インターネット」の大きな特徴です。


従来のITスタックではなぜ難しいのか

複雑さの壁

従来のIT環境は、巨大で複雑な技術スタックと膨大なドキュメントに支えられています。IT担当者の95%の時間は「何を作るか」よりも「どう構築するか」のほうに割かれているといっても過言ではありません。AIの“幻覚”や“ミス”ひとつで重大な脆弱性を生み出してしまうリスクもあり、サイバーセキュリティ面でも大きな課題が残ります。

サイバーセキュリティの不安定さ

従来のITはファイアウォールを中心とした防御に依存しており、ほんの小さな設定ミスや未知のマルウェアがシステム崩壊につながります。一度ハッカーに侵入されれば、ランサムウェア攻撃やデータ漏えいは防ぐのが困難で、現行アーキテクチャでは根本的な解決策を見出せません。AIが単独で開発・運用するには、あまりにも大きなリスクと言えます。

アップグレードとデータ移行の困難

現在のITでは、データベース、アプリケーションサーバー、ライブラリなど多岐にわたるコンポーネントを手動でアップグレードする必要があります。ライブラリを変えようとするとOSのバージョンも上げなければいけない…といった“問題の梯子”に悩まされることも珍しくありません。これでは「チャット速度」での構築・改善は到底望めないでしょう。


インターネットコンピュータプロトコル(ICP)が変える未来

パーミッションレスなワールドコンピュータ

インターネットコンピュータは、世界中の130以上のノード提供組織が運営するソブリンハードウェア上で構築される分散型ネットワークです。特徴的なのは、サイバー攻撃にも非常に強靭な「数学的に安全なネットワークプロトコル」を用いている点です。

  • 攻撃者が一部ハードウェアを物理的に掌握しても、サービスを止めたりデータを破壊したりすることはできない
  • サーバーレスコードをアップロードするだけでアプリが動くため、フェイルオーバーやセキュリティ対策の複雑さが大幅に軽減
  • 従来のようなファイルやデータベースが存在せず、「直交永続性」によりデータとロジックが一体化して扱われる

こうした“止められない”コンピューティング環境こそが、AIが単独でコードを書き、デプロイし、継続的にアップグレードし続けるためのベストプラットフォームなのです。


AIがソロで構築するための「秘密のソース」

ロスセーフデータ移行

インターネットコンピュータ(ICP)のプログラミング言語(たとえばMotoko)は、アップグレード時にデータを安全に移行できる仕組みを標準で備えています。

  • 新しいコードをデプロイする際、以前のコード・データ構造と比較して「データが失われないか」を自動チェック
  • 万が一データロスが起こりそうな変更を見つけた場合、そもそもデプロイ自体を拒否

これにより、AIが書いたコードでも、万単位のユーザーを抱えるサービスでも、チャットをしながらアップグレードを安全に繰り返すことが可能です。

直交永続性によるシンプル化

従来のITでは、データベースに対してORマッパーやSQLクエリなどを介してデータを保存・取得します。しかしインターネットコンピュータでは、コード内のデータ定義をそのまま永続化できるため、アプリ開発の工程が桁違いにシンプルになります。AIにとっても扱いやすく、コード生成とデプロイがスムーズに行えるわけです。


飛躍的な生産性向上と未来の可能性

コスト1%、速度100倍も夢ではない

自己記述型インターネットパラダイムがもたらす最大のメリットは、開発・運用コストの圧倒的削減とスピードアップです。従来のITに比べて、コスト1%・速度100倍という、にわかには信じがたい数字も現実的だと感じています。理由は以下の通りです。

  • 複雑なインフラの構築やサイバーセキュリティ対策に時間・労力を費やす必要がない
  • “コード+データ”が直交永続的に扱われるため、アップグレードの負担が極端に軽減
  • Web3や相互運用性、改ざん耐性といった次世代の要件も標準で備えられる

これらすべてが、将来は数百万のアプリケーションやサービスが存在する世界を実現し、しかもそれを誰もがAIを介して創造できる時代をもたらすのです。


エンジニアやデザイナーの未来は?

「AIがすべてのアプリを作る時代になれば、ソフトウェアエンジニアやデザイナーの仕事はどうなるのか?」という疑問は、多くの人が抱いていると思います。私の考えは次のとおりです。

  1. 80億人がAIを駆使してアプリを作るようになる
    これまでITの恩恵を十分に受けられなかった人々が、AIとチャットするだけでウェブアプリやサービスを始められるようになります。
  2. “プロンプトエンジニア”や“技術系の起業家”が増える
    AIの力を借りながら自分のアイデアを形にする人が増え、これまで以上に多様で斬新なサービスが生まれます。
  3. 専門家の需要が増える
    作ったサービスが成長すれば、人間のエンジニアやデザイナーのサポートが必要になります。結果として、ソフトウェアエンジニア、UI/UXデザイナー、グロースハッカーなどの需要は増えこそすれ、減ることはないでしょう。

終わりに

自己記述型インターネットパラダイムとインターネットコンピュータプロトコル(ICP)が組み合わさることで、私たちは安全で止められないコンピューティングの新時代に突入します。AIによるソロ構築が当たり前になり、Web3や分散型サービスが急速に普及するでしょう。

私は、分散化のための“NASA”として設計されたDefinity Foundationの一員として、1000人年以上の研究開発を経てICP技術をブートストラップしてきました。私たちの使命は、コンピューティングを安全かつ止められないものにし、AIによる新しい可能性を広げることです。

最後までお読みいただきありがとうございます。私の最新情報はX(旧Twitter)で配信していますし、財団へのお問い合わせもお待ちしています。それでは、また近い未来にお会いしましょう。さようなら。



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